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アイルランド・オランダ旅行記

第4日「アラン諸島、イニシュ・モアへ」

[Japanese only]

 

2001年8月7日(火)

朝。やはり時差の関係で早くから目が醒める。娘たちも同様。

Four Seasons B&B の朝食も良かった。「アイリッシュ・ブレックファストがいい?スモークド・サーモンもあるけど?」「はいはい、サーモンお願いします(写真:下左)」。昨夜スモークド・サーモン食べたばかりだけれど、そんなことかまっちゃいられない。美味しいものが食えるときに食っておかなくちゃ。このように、B&Bの朝食がアイリッシュ・ブレックファストだけだとは限らない。ご当地物が食べられるかもしれない。「朝食は何がありますか?」と聞いてみよう。ケイコはソーセージがお気に入りなのでアイリッシュ・ブレックファスト。

さあ、いよいよアラン諸島のイニシュ・モア島へ出発だ。島では一泊の予定なので大きなスーツケースは持っていきたくない。Four Seasons B&B で荷物を預かってもらう交渉をする。「明日まで、このスーツケースを預かってくれませんか?」「不可能なことは何も無い。心配するな、ここはアイルランドだ。」この何の根拠も無い自信に満ちた態度は、しかし安心感がある。好きだな、この親父。奥さんも感じがいいし。

朝食の後、親父にバス乗り場まで送ってもらう。9時のバスだと言ったら、「じゃあ、9時に出よう。」「おいおい・・・。」8時45分に出たいというと、「何を心配しているんだ。」「・・・。」彼によると人生で心配しなければならないことは2つしか無い。「病気にならないこと」そして「病気になったら少しでも早く直すこと」。「治らないんじゃないかと心配しても、死んじまったらどうせ何も分からなくなるんだから、心配する事ない。」「・・・(敬虔なカソリック教徒の言う事か?)」

直接乗り場に行けば良かったのだが、小雨が降っていたのでツーリストのオフィスに連れて行ってくれる。親父曰く「ここで待っていればいい」。この親切があだになり、不安を感じてバス停に行ったときには1台目のバスはいっぱいで乗れず。2台目のバスに乗り、ロザヴィール(Rosaveal) へ。バスの運ちゃんは陽気にいろいろ話し掛けてくれるが…すみません、あなたの英語は良く分かりません(;;)。

 

ロザヴィールまでは50分ほどの道のり。車窓からの眺めは良い。途中海沿いのゴルフコースが見えたり(写真:上右)。スコットランドにも似た、でもそれよりは少し優しい独特の厳しい自然の風景。日本の藁葺き屋根のような屋根を持つ家屋も見える。壁は白に、窓枠は赤や緑に、ペンキを塗りたくっているところは英国風。

ところで、アラン諸島へのフェリーだが、ゴールウェイから出る物もある。しかし、少し考えれば分かることだが、水の上を進むフェリーより陸を走るバスの方が速い。ロザヴィールまでバスで行って乗り換えるのは二度手間で面倒だと感じるかもしれないが、絶対にこちらがお薦め。理由は…後でわかるだろう。

港に着く。桟橋のフェリーはそう遠くないが、雨が強くなり、風も強く、寒い。横殴りの雨なので傘が役に立たない。Dartの中でこちらのおじさんに言われた事が頭の中をよぎる。「何持ってんだい?傘?傘なんて役に立たないよ」。子供たちが寒がっているので大人用のセーターとトレーナーを着せる。大人の分だけでも雨具兼用のジャケットを持ってきて良かった。村上春樹に感謝(第2日ご参照)。

教訓その4:地元の方の忠告には素直に耳を傾けよう…でも騙されないようにね

教訓その5:アイルランドに来る方は、雨合羽が必需品です(山用の雨具みたいなのが良い。当然荷物もそれ見合いのもの)

フェリーの中も非常に混んでいて、ようやく席を見つける。私たちの直後乗り込んだ人たちは立ちっぱなし。スーツケースをBBに置いてきて良かった。とてもじゃないけどあんな重たいものを持って入れるような状態じゃない。子供達を抱きしめ、手をこすってやりながらとにかく耐える、耐える、耐える。エンジンの音と波の音。周りの人たちのざわめき。湿った空気、湿った服。窓が曇って外は何も見えない。耐える、耐える、耐える。

どれだけ耐えたろう。「地球の歩き方」によればこの航路は20分。そんなはずはない。優に1時間以上は乗っていたぞ。と、言う事は、ゴールウェイから載っていたら…って想像もしたくない。

島に着いても雨。しばし、桟橋の岸壁に身をよせて雨をしのぐ。涙が出そう。大人はともかくとして、子供達が可哀そうすぎる。桟橋の根元あたりにポニーの馬車が何台も客待ちをしている。彼らのターゲットは日帰りの観光客だ。御者に住所を見せて「このB&Bまで行ってくれるか?」とたずねると、「予約があるからだめだ」。うそつけ・・・でもそりゃ長時間の観光でたくさん払ってくれる客を見つけたいよね。客待ちの列に並んでいるタクシーと一緒だ。でも、この雨じゃ、あまり期待はできないと思うよ。

一本道の坂を登っていく。ようやくツーリスト・インフォメーションにたどり着いてB&Bの位置を尋ねる。歩いて十分と聞いたが、雨の中、子供の足では非常に遠い。娘達が大丈夫かとヤキモキしたが、「寒くない」。何も事情が理解できない3歳のケイコにとっては拷問だよね。これって。少しでもいい記憶が残ってくれるといいんだけれど。

BBに着き、やっと人心地。部屋の準備ができるまで、居間で一休み。ここには良く来るというアイリッシュとしばし歓談。曰く「アラン諸島はすばらしいわ。ここに来るだけでくつろげるの」。もちろん、私達にはまだ、そんな実感はぜんぜん無い。

メグミとケイコは電源の入っていない大きなテレビの丸い画面に映る自分達を見て踊りながらはしゃぐ。テレビに映っているんだそうだ。なるほど。遊ぶということに関して、やはり、子供達は天才だと思う。高いオモチャやゲーム機で想像力を縛ってしまうのは良くない。

ようやく二階の部屋に通され、一休みしているうちに空が晴れてきた。明日晴れるという保証も無い。少々の曇りでも観光に出たほうが良いと判断。着替えて下に下りると、さきほどのアイリッシュのおばさんが「今よ、今。直ぐに出かけなくちゃ」。言われなくても分かっています。

天気はだんだんよくなってくる。歩いて港の方向へ。なんだ、こんなに近かったんだ。途中の雑貨屋でメグミのカメラのフィルムを買う。高い。マレーシアで調達してくるんだった。雑貨屋の入り口は小さいが、中は日本のスーパーマーケットみたいに広く、近代的。子供達の雨合羽を捜したが、良いものは無い。今朝みたいな天気に逆戻りしたらどうしよう。

港のそばのセーター屋で雨合羽を物色。大人の上半身用だけど娘達がかぶると足まで隠れる。腕はちょっと長すぎるが、ちょうどいい。色も黄色でぴったり。よし、二つ買おう。これで一安心。

レストランで遅い昼食。ここはファスト・フードで済ませる。Kanaoはとりあえずギネス。缶しかなかったけれど、まあ、しょうがない(写真:下左)。缶の下の方に"Serve Extra Cold"と書いてありますね。「ギネスは室温で飲む」と習うのはなんなんでしょう?

 

いよいよ、ポニーコーチを拾い観光に。ドン・エンガス(Du'n Aonghasa)の絶壁まで往復で35ポンド。ケイコは最初怖がったが、すぐに慣れる。動物好きのメグミは大喜び。馬はパッカ、パッカ、蹄をならしながら親子四人と御者の乗ったコーチを曳いていく(写真:上中)。御者は気を利かして海沿いの道を行ってくれる。のどかな、でも荒涼とした風景が続く。

「石をつんで塀をつくり、表土の流失を防いで土地を改良してきたんだ。ずーっとね。機械なんて無かった。みんな人の力でやったんだ。この海に近いほうは岩だらけだろう。まだ改良が進んでいないんだ」。御者は気の遠くなるような人類の営みを語る。彼は途中見かける友達に話し掛ける。全く分からない。ゲール語だ。そうだ、彼はケルトなんだ…と思い出す。

途中の湾ではアザラシを見かける。馬車を降りて30分弱丘を登りドン・エンガスの断崖に到着(写真:上右)。絶景。3歳のケイコがごねて登らないかと思ったが、歩き出したら喜んで歩く。断崖の上では「あそこから先は地面が無いからね。あっちに行って、落っこっちゃったら、もうパパでも助けられなくて、死んじゃうからね」と脅す。ケイコはこの手の脅しにとても弱い。普段の極めて大胆な性格からは信じられないほど臆病なのだ。

それにしても、このドン・エンガス、柵も何もない。本当に崖っぷちまで歩いていける。全ては個人の責任でということなのだろうが、後で訪れるモハーの断崖とは全然違う。

高所に弱いKanaoにとっては真剣に怖い。今、この瞬間は自分達が乗っている岩が崩れないでくれよと思う。バルセロナのサグラ・デ・ファミリアの塔に登ったときに「今、この瞬間だけは地震が来ないでくれ」と思ったのを思い出した。富士吉田の風穴に入っていたときもそんなことを考えていたっけ・・・。とにかくKanaoは高いところ、暗いところ、狭いところが苦手。それが理由でペナンのコンドミニアムも12階建ての中の3階。上の階では怖くて窓に近づけない。

おっと、また話が脱線。

御者に「夕食の美味しいところはあるかい」と尋ね、港の近くの、やはりマック・ドナーというシーフード・レストランに案内される。メグミとケイコは馬車に向かって「お馬さん、バイバーイ」と何度も何度もお別れをする。そうだね、本当に、ご苦労様。一家四人を引っ張って歩いてくれたんだものね。

 

レストランは洒落ていた(写真:上)。当然Kanaoはギネスを注文。おつうはロブスター・クロウ・・・豪勢なロブスターのハサミの山盛りを注文。大きくて見栄えはすごいが、殻が堅く、山のようにかけてあるオリーブ・オイルで滑り、味は単調。Kanaoが助けに入るが、とにかく山盛りで、食べても食べても無くならない。手はベトベト。美味しかったけれど、昨夜のマック・ドナーに軍配。

食事の後、タクシーを呼んでB&Bに戻る。大きなワンボックスがやってきた。これがここのタクシー。宿に戻り、シャワーを浴びて、子供達を寝かせる。Kanaoはドライヤーで濡れてしまった衣類を乾かす。とにかく今日は疲れた。子供達が病気になりませんように。

 

気合を入れた写真は例によって Image Archives of Wanderer Kanao の方に掲載しました。見てやって下さい。