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アイルランド・オランダ旅行記

第5日「快晴!レンタカーでコネマラに向かう」

[Japanese only]

 

2001年8月8日(水)

相変わらず早朝から目が醒める。時差ぼけは簡単には直らない。しかし、おかげで普段は朝寝坊のKanaoが日の出前に外に出ることが出来た。イニシュ・モアの朝だ。

ニコンF3とクールピクスを持って散歩。薄暗い空に満月を過ぎた月が浮かんでいる(写真:下左)。牧草の臭いが朝の湿った空気に乗って緩やかな風に運ばれる。誰にも会わない。積み上げられた石の壁で仕切られた中で牛や馬が立ちつくしたり、草を食んだりしている(写真:下中)。愛らしい花々が静かに揺れている。時折、立ち止まり、しゃがみこみ、シャッターを切る。雲は出ているが天気はそう悪くない。島を縦断する道沿いに西に向かう。左手に現れた岩壁に、青と水色で彩色されたマリア像が鮮やかに立ち現れる(写真:下右)。アイルランドは本当にマリア信仰が根付いている。

 

途中から道を右に折れて海岸に向かう。石を積み上げた壁の中はお花畑になっている(写真:下左)。朽ち果てかけた行き先案内に風情を感じる。細い道を一本横切り、海岸に出る。浜は、ごま塩のように白と黒が混ざった粗い砂でできている。その上を歩くと、砂はザラり、ザラりと足の下で崩れる。岩場には海洋植物が僅かに生え、日の出の光を浴びている。砂浜には有名な獣皮の皮を張ったボートがうつ伏せにされて固定されている(写真:下右)。船底を叩いてみると、意外に堅い。それにしても何処もきれいで、写真趣味のKanaoとしては、絵になりすぎて「撮らされている」と感じる。

 

宿に戻って朝食。またアイリッシュ・ブレックファスト。いいね、これ。でも、毎朝こんなにしっかり食べていたら、太りそう。このB&Bは完全に商売。旅館みたいなもの。おかみさんもチェックインの時にチラッと顔を見せただけで後は見かけない。娘さんなのか、アルバイトなのか、二十歳ぐらいの若い娘が給仕をしてくれる。背の高い、ソバカスだらけの素朴な感じの可愛い娘で好印象。Kanaoは鼻の下を伸ばしていておつうに呆れられる。他の客と喋っていた内容からするとゴールウェイあたりの大学生で、ここの娘さんではなさそう。

ここの宿も一泊のみ。先程の女の子に宿代を払い、写真を撮りながら港に向かう。おつうと娘たちはどんどん歩いていってしまう。Kanaoはあちこちでひっかかって写真を撮るのでどうしても遅くなる。この最果ての小島に、もう来る事も無いだろうと思うと、小さな花が、鶏が、岩壁が、妙に気になる。

おつうはやはりアランセーターが欲しい様子。「買ったら?気に入ったんなら」。港に向かう途中のセーター屋は小さくて品揃えは多くないが、一品生産でいかにも手編みのしっかりしたもの。港にある大きなセーター屋は種類が豊富だが、手編みでも同じセーターがたくさんあって風合いはやや劣る。結局おつうは手編みの「いかにも」ではないセーターを、娘達は「すぐ大きくなるし」と機械編みのセーター。メグミは羊のアップリケ入り。ケイコは緑でIrelandと刺繍が入っている。後で「買っておいてよかった」となる買い物。

港の近くの大きなみやげ物屋では日本人客の集団に出会う。初老過ぎ(しつこい!!)の Kanao からしても先輩に当たる方々だ。「あら、ご家族で観光?いいわね近頃の若い人は…」(ヤカマシイ、もう若かネエ!)…から始まり、私たちがマレーシアから来ていると知ると「オレが20年前にマレーシアに行った頃は…今でもあの店は…」…。「…アメリカに行ったと時にゃあ…」。…。…。(はいはい。分かった。分かりました。分かりましたけど、そんなに旅慣れているんなら税金の払い戻しカードぐらい店員の言うようにサインしなさいって。)

天気良く、港につく頃には暑いぐらい。周りの観光客も薄着で昨日とは様変わり(写真:下左)。しつこいようだが、アイルランド旅行をご計画中の方は山にハイキングに行くぐらいの覚悟で、調節の可能な服装を。

 

フェリーの中は空いていて、海の状態も良く快調に飛ばす(写真:上中)。Kanao は缶のギネスを片手に海の写真を撮る。船は小型の高速フェリー。それでも50分。「地球の歩き方」の情報25分はどうなっているんだ?海流の関係か何かでしょうか?そう言えば、「地球の歩き方」の投稿情報を信じてフランスのマルセイユで食べたブイヤベースは信じられないぐらい不味かった。何で食文化の国フランスまで行ってあんな不味いもの食わなきゃいけないんだ、ブツブツ・・・とおつうと意見が一致。カルティエラタンの学生食堂で食べたチキンの方がよっぽど旨かった。

ロザヴィールの港に着き(写真:上右)、バスに乗る。来るときと同じ運転手だ。ゴールウェイの町に着き、バジェットで予約しておいたレンタカーを借りる。レンタカー屋から車の置いてある駐車場への行き方が良くわからない。渡された地図が正しくないのだ。良くも悪しくもアバウトな国です。日本のつもりでいると面食らいます。重い荷物を持ってウロウロしているうちにおつうと喧嘩。夫婦喧嘩は犬も食わない?

やっと探し当てた車は、薄緑色のイタ車、フィアット・プント。どうしてこれがカローラクラスなんだ?どうみてもカローラよりずっとちいさいぞ。でも乗り出してすぐわかったが、小回りが効いて便利。塞翁が馬。思えば十年前、新婚旅行で行ったスコットランドで借りた車はVWのポロだった。あれも小さかったおかげで助かった事があったっけ。アイラ島という小島に渡るフェリーが一杯で、皆が追い返されている中、予約もしていなかったのに小さかったので「来い来い」と手招きして乗せてもらえたのだ。小さな紺色のポロは、フェリーの扉の横の小さなスペースにはめ込むように収まったっけ。アイルランドの田舎は道が細いのですれ違うときや、道を間違えたときに反転するときに小さい方が楽。ただし、万が一の場合は大きい方が安全なのは言うまでもない。

B&Bで預けておいた荷物を受け取り、コネマラに向かう。ゴールウェイの町で迷う。迷う。迷う。ロザヴィールのフェリー乗り場に向かうバスと同じ方向に行けばよいのに思い出せない。正しい道に乗るのに1時間。道路の表示に慣れない。コネマラに入ってからも道を間違える。とんでも無いところまで入ってしまう。車窓は絶景!天気は快晴!またアイルランドに来る機会があったら是非訪ねたい場所。

 

車を止め、人に道を聞きながら行きつ戻りつ。もう夕方の6時。あせる。日が長く、9時近くまで明るいのが救い。そういえば、7月にエジンバラに出張したときは10時過ぎまで明るかったっけ。まだ日が高いのにお店がみんなシャッターを閉めてしまうのが不思議な光景だった。結局、R336からR340に入るつもりが勘違いしてR343/R374に入ったのが間違い。レンタカー屋でくれた地図は、一見良さそうだがこの辺がちゃんと分からない(写真:上右)。5ポンドはたいて買っておいたミシュランの地図が役に立ち、ようやく本来の道へ。「どうして最初からミシュランの地図を見ないんだ」とナビのおつうと喧嘩。この後は、ミシュランの地図のおかげで迷うことなく進む。しかし、R374沿いの眺めは美しい。天気は良い。車を止めて写真を撮る暇がなかったのが残念。

教訓その6:レンタカーを借りるなら、地図はしっかりした物を手に入れておこう

ようやく正しい道へ。風化した夥しい数の丸い岩が転がる原野を右に左に上に下に、道は一本のリボンのように地形に沿ってへばりついている。その後、R340は小さな半島をぐるりと回る景色の良さそうな道だけれど、これも割愛。細いショートカットを進む。緩いワインディングが上下しながら果てしなく続く。薄緑のフィアット・プントは小気味良く駆け抜けていく。エンジンは非力だが、車体の軽さがこの軽快な走りを可能にしているのだろう。イタ車の流儀にのっとり、エンジンをブン回すと楽しく走れるのはこの娘も同じこと。

スコットランドに似た禿山のような不思議な光景の中を進む道。R340に戻ってすぐ、今度はR342へ。どうしてこう紛らわしい番号が続くんだ。最後はR341。ようやくラウンド・ストーンに到着。ちいさいけれど、とても洒落た海沿いの村。何故この村が観光ガイドに載っていないのか不思議なぐらい。BBはまだ先のようだ。後ろ髪を引かれながら村を走り抜ける。

暗くなるころ、今夜のB&Bに到着。おかみさんは素敵な人。5人の男の子と一人の女の子を育てた、パリ・ジェンヌの様なしゃれた元気な人。「すみません、遅くなって。3度も道に迷ってしまって。」「いいのよ、いいのよ、道に迷ったのはあなたが初めてじゃないわ。アイルランド人でも迷うんだから。まあ、なんてゴージャスな娘さんたち!!」何故東洋人の痩せた娘がゴージャスなのか未だに良く分からないが、このロッジの印象が悪かろうはずが無い。

夕飯は途中道を聞いた雑貨屋で買ったサンドウィッチ。イニシュ・モアの雑貨屋もそうだったけれど、入り口が小さい割りに入ってみると広い。それに中身は近代的で日本のスーパーのように見える。入り口だけ見て「シケたショップ!!」などと誤解せぬよう。ところで、このサンドウィッチ、これがなかなか美味しい。

 

おかみさんの薦めで、近くの町ラウンド・ストーンのコミュニティーセンターへ(写真:上)。アイルランド民謡、踊りを現地の人たちが披露し、喉に覚えのある観光客も自国の歌を披露する。プロではない、素朴な歌声や外見、そして素晴らしいタップ・ダンス。開催時間より遅く入ったら、「いいのよ、いいのよ」と入場料を割り引いておまけしてくれた。この地に水曜日に泊まったのも何かの引き合わせだと感じる。この催しは夏の間の水曜日だけなのだから。

それにしても、高密度の一日。走行157kmの割には疲れた。

 

気合を入れた写真は近いうちに Image Archives of Wanderer Kanao の方に掲載します。見てやって下さい。