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アイルランド・オランダ旅行記

第8日「快適な道、ウォーターフォードへ」

[Japanese only]

 

2001年8月11日(土)

 

気持ちの良いベッドで眠りからさめる。外は小雨。昨日よりはましか。空は明るい灰色でそう悪くないけれど、B&Bの食堂の窓から見える海岸では、雨と風に叩かれている白い海鳥たちが灰色の風景の中の白い砂粒のように見えていた。この朝ばかりは、砂浜近くの草の緑も重い風景を生気溢れるものに変えるだけの力を持っていなかった。もっと簡潔に言ってしまうなら、この窓から眺めた風景は、夏のものとは思えなかったのだ。もしかしたら、ここの浜で泳げるんじゃないかなどと思い、水着まで持ってきた私達は何だったのだろう?

 

ところで、コネマラのシェリーのB&Bもそうだったけれど、こういった田舎のB&Bでは部屋の鍵ももらえなかった。つまり、寝ている間も無施錠ということ。それが当たり前なぐらい安全なお国柄なのだろう。もちろん、ダブリンやアラン諸島のような典型的な観光地では、世界中からどんな人が訪ねてきているか分からないから用心しなければいけないけれど。

朝食が終わったころ、「今日はどこまで行くの?」とおかみさんが聞いた。「ウォーターフォードの近くまで」と答えると、彼女は肩をすくめてみせた。「町は迂回して、直接N22に抜けたほうがいいわよ。」「そうします。」

ビーチ・コーヴを後にして小さな集落を抜けて・・・、何だこちら側は普通の道じゃないか。昨日の道がどんなだったのかを確かめに戻りたいような気もするが、そんな余裕はない。

リング・オブ・ケリーに戻ったあたりで教会を見かける。墓地にはケルティック・クロスと呼ばれる十字架に丸を加えた独特の形を持った墓石が立ち並び、多くの墓は献花されている。敬虔なカソリック教徒の住民が毎週礼拝に訪れ、亡くなった遺族を思い出すのだろう。どこの国を訪れても、その田舎でこそ、その国の文化を肌で感じる事ができるように思う。

さて、実を言うと、この日のトピックスは無い。あまり書くことが無いのだ。この日はリング・オブ・ケリーの突端からコーク(Cork)とウォーターフォードの中間にある田舎町のB&Bまで行ったのだが、その道があまりに快適で、あっけなく着いてしまったから。こんなことなら立派な港町であるコークでゆっくりすればよかったと悔やんだ。とにかく、キラニーからダブリンに向かうN22,N25,N30等の南海岸沿いの道は良く整備されており、快適だ。レンタカーで移動されるのなら、西海岸に比べて多少厳しいスケジュールでも大丈夫だろう。つまり、街でもっと時間を使っても大丈夫だということ。

とにかく、昨日のトラブルに懲りて、とにかく先を急いだ。こんな時、行き当たりばったりの旅なら面白そうな街に泊まれてよいのだけれど…。で、コークは面白そうでした(^^;。大都会ですが。コークを抜けて、昼食を取ろうとしたら、まるで日本の高速道路のようで面白そうな所が見つからない。お城のマークが見える出口があったので、そこで降りて昼食。観光地のお城ならレストランぐらいあるだろうという読み。

読みどおり、レストランはありました。食事も結構美味しかった。でも、何か変。このお城に住んでいた貴族の末裔がやってるんでしょうか?従業員が大男で、態度が妙に偉そう。でも人は悪くなく、悪気は無いらしい。単に普通のレストランのウエイターのような態度が取れないということらしい。何か、不思議。Image Archives のアイルランドのページの壁紙は、このお城のレストランのとある窓です。庭はバラの花などが綺麗でした。そして、その城の名は…分からない(^^;;;。観光地なんだから後で地図を見れば分かるだろうとメモしなかったのです。そうしたら地図にもガイドにも載っていない!!

 

おなかが一杯になったところで次の街、Youghalを目指す。ヨールと読むらしいんですが難しいですねぇ。街を物色して歩き、夕食に良さそうな場所を探すが、どうもピンと来るレストランが無い。おつうと相談の上、次の町、Dungarvanを目指す。こちらは「地球の歩き方」にすら載っていない町なので、未だに読み方が分からない。ダンガーヴァンでしょうか?

ところで、これら2つの街、どちらもノルマン人の手による港町。で、街中を歩いている人たちの風貌は、明らかに西海岸とは違う。背が高く、面長で鼻が高い。で、街の雰囲気は…Kanaoとしてはあまり好きじゃない。別にノルマン人に恨みはないんですが、10年前の新婚旅行でスコットランドに行ったときも、東海岸の大漁港、アバディーンだけはあまり好きになれなかった。あそこの街も北欧系の人が作った街でしたよね?ストックホルムは良かったんだけれどなぁ。結局ダンガーヴァンでも気に入るレストランを発見できず。これらの中間点をやや内陸に入ったアグリッシュにあるB&Bを目指す。「きっと近くに何かあるだろう…」

甘かったですね。何にも無い。ちょっと迷った後、B&Bは見つけたのですが、食べるところは近くになさそう。土曜日のためか、村のお店は皆閉まっているし。おつうと相談の結果、ヨールの方がましだったという結論になり、ヨールに車を飛ばす。小雨の降る中、レストランを求めて歩き回る。この街の看板らしい道をまたいで立つ時計台の前で記念写真。とにかく雨を避けて歩き回る。ようやく見つけたまあまあのレストランで食事。飲み物はワイン主体でギネスは無い。まあ、いいや。とにかく食事だ。

 

食事を終えて、B&Bに戻る。このB&Bが最高!着くなり一家を挙げて出迎えてくれる。家族のメンバーは面白い人ばかり。B&Bは趣味でやっているとしか思えない。まず、息子が「やあやあ、よく来たね」と出迎えてくれて、奥さんが「まあ、ウイスキーでもやりなさいよ。それともコーヒーにする?」まず、コーヒーをもらい、それからKanaoは進められるままにパワーズをいただく。「ところで、食事は済んだ?うちで食べない?いい料理人がいるんだけれど?」。しまった。こんな事ならここで食べればよかった。

この一家は大きな農場をかかえ、17世紀に立てられたという建物は立派。殆どお城のよう。調度も素晴らしい。カップボードの上に並べられたクリスタルは名のある物なんだろう。ピカピカ光っているのは銀食器なんだろう。置時計も只者ではなさそう。でも手入れはかなり適当と見た。大雑把な性格のおつうは共感できるものがあったらしい。机の上に雑然と置かれた雑誌の上に、コーヒーカップをドンと置かれる。

家族の5人ほどで、車は大きなボルボが2台、フォルクス・ワーゲンが一台、シトローエンが1台。一家族から一泊60ポンド(8000円ぐらい)とっても車の維持費にもならないと思うのだが・・・。このようにいろいろな家庭を経験できるのもB&Bめぐりの醍醐味。

メグミは生後4ヶ月ほどの猫がお気に入り。猫は何匹もいるのだが、この子だけが特権的に家の中に入るのを許されているのだそう。

イギリスからホリデーに来ている家族と知り合う。ゴルフをしにアイルランドまで来ているんだそうだ。12歳の少年が一緒。普通の家庭なのだろうが、少年の態度は素晴らしい。英国人は躾、教育に厳しいというが、その一端を垣間見た気分。娘達をやたらに厳しく躾るつもりもないが、背筋を伸ばし、きちんと相手の目を見て話す、ちゃんと挨拶する・・・なんて部分は見習わなくてはね。シャイだから・・・なんてのは言い訳にならないよ、ね、メグミ。

普通の部屋ぐらいあるバスルームで映画に出てきそうなバスタブにつかる。とにかくだだっ広い部屋で寝る。落ち着かないほど広い。とにかく寝よう。

今日の走行は322km。

気合を入れた写真は近いうちに Image Archives of Wanderer Kanao の方に掲載します。見てやって下さい。