懐かしのマレーシア

2006年4月3日:(その1)午前中は運動会

[Japanese only]


4月3日(月曜日)午前

 今日の午前中は、娘たちが昔通っていたインターナショナルスクールのスポーツデー(運動会)。せっかくなので、これを見学させてもらい、まだ残っている先生方や友達に挨拶することにする。早朝、恵の中華系の元同級生のお母さん:D夫人がホテルまでピックアップに来てくれる。感謝。朝早く出発しなければいけないので、朝食はバクテーだのディムサム(点心/飲茶)だのというのは諦め、昨日コールドストレージ(スーパーマーケット)で買ったパンですます。

  D婦人からの情報では今は緑色の車に乗っているとのこと。ホテルのロビーで待っていると、確かに深い緑色の車が滑り込んできた。再会を喜び合い、早速車に。外から見たときにはローバーかと思っていたのだが・・・何か雰囲気が違う。「これはどこの車ですか?」「確か、ドイツのよ」・・・。見知らぬブランド。落ち着いたエクステリア、品の良いインテリア。乗り心地も悪くない。外国に行くと、こんな経験がよくある。早い話、英国のヴォクソールなんか、ビッグブランドだが、日本でこのブランドを知っている人は殆ど居ないだろう。「そんなことは無い」というあなた。あなたは、車にかなり詳しいのである。とにかく、世の中は、結構、広い。

 スポーツデーの会場までの道のりは、良く知った物だが・・・見違えるように混んでいる。本当に車が増えたなぁ、と実感。今日のスポーツデーは大学のグランドを借りて行う。去年あたりからそうしているらしい。小学生には過剰とも思える大きなトラックと階段状の観客席。小さいうちからこういうのを経験していたら、感覚が違ってくるだろうね。トラックの中は芝生の緑が眩しく、バカドリ(カバイロハッカ)が虫を探して歩き回っている。少し早くついた我々が大学の入り口に目を凝らしていると・・・来ました来ました。黄色いスクールバスが3台。

 駐車場から先生に先導されてゾロゾロとやってくる子供たちを見ていると・・・確かに、見知った顔がチラホラ見える。大分、背の高さは違っているけれど。この年代の子供たちにとっての2年間は、決して短い時間ではない。楽に10cmは背が伸びる時期だ。引率している先生方の中に、娘たちが二人とも担任をしていただいたインド系の先生を見つけて、娘達の背を押す。「運動会が始まったら先生は忙しくなるから、今のうちに挨拶しておいで」。娘達に気がついた先生は、驚き、喜んで、力いっぱい抱きしめてくれる。こちらの女の先生はみんなこうだ。「こんにちは。ホリデーで来ました」「聞いてるわよ。明日から来るんでしょう?」「・・・???」。この懐かしい先生と、一緒に写真を撮らせてもらって分かれる。

 何か、話が変だ。確かに恵が校長先生にメールを打った。「学校に訪ねて行っても良いですか?」と。「歓迎」との返事ももらった。我々のペナン滞在の最終日、金曜日は学期の終わりのパーティーデーだからと、恵のもう一人の中華系の元クラスメートが、担任の先生に「恵が来るからクラスに入ってもいいよね」と確認してくれたのも知っている。でも、なんか、私たちが期待していたのとは違う話が進行しているような感じがする。

 校長先生の時間が空いていそうな時を見つけて挨拶する。校長先生は忙しいのだ。とにかく、6人ぐらいの組で徒競走をするのだが、一組終わるごとに一位から三位までの生徒を表彰台に上らせて、メダルを首にかけてあげるのだから。各競技毎にこの調子だから、結果として、運動能力の優れた子は、スポーツデーの終わりにはジャラジャラとメダルを持って帰ることになる。

 とにかく、校長先生も娘達を見つけて「良く来たね」と歓迎してくれる。皆が歓迎してくれる。欧米では、赤ちゃんが生まれた時に"welcome"と話しかけると聞いたことがあるが、この言葉の意味を改めて噛み締める。ペナンに来て、皆が暖かく迎えてくれて、娘達は、自信を持っただろう。自分達を受け入れてくれる人がこんなに沢山居る。この認識は、とても重要なことだ。

 私からも校長先生に挨拶する。「2年ぶりにやってきました。学校の方にもお邪魔したいのですが」「うん、聞いてるよ。恵は誰と仲が良いのかな?」と恵にたずね始める。次いで同じ質問を佳に。「???」どうも彼女達を入れるクラスを考えてるようだ。娘達と一緒に写真を撮らしてもらうなり、「じゃ、明日、待ってるから」と言い残して、校長先生はメダル授与に駆り出されていった。重ねて言う。校長先生は、忙しいのだ。

 それにしても、今までの先生方の反応からすると、我が家の娘たちは、「火曜日から金曜日まで4日間も学校に『通う』」という話になっているらしい!?学校にはちょっと挨拶に行って、学校が引けてから、今日はあの子と、明日はあの子と・・・という形で娘たちを元クラスメートに会わせるつもりでいた私たちにとっては、望外の喜び。なんてったって、毎日全部のクラスメートと何時間も一緒に過ごせるのだから。

 恵は元クラスメートに混じって座っている。昨日、遊びに行ったインド系の子も居る。佳は残念ながら、帰国した頃、まだ小さかったのでそれほど元クラスメートとの結びつきが強くない。もう、1,2年居たら違ったのだろうけれど。早い話、恵は何人かのクラスメートとメールでやり取りしている。佳もメールアカウントを持っているが、同じ歳でメールをやり取りできる子は殆ど居ない。2年前の恵でもぎりぎりだったぐらいだから。私達が日本に帰ってきた直後ぐらいから、恵のクラスメートがメールを使い始めたのだ。

 どうこうしているうちに、他のクラスメートの親もやってくる。恵のもう一人の仲の良い元クラスメートであるハーフの子のお母さん:J夫人もやってきた。皆と再会を喜び合い、情報交換する。「明日から学校に来ることになったの?よかったじゃない。朝、私がホテルまで迎えに行ってあげるわ」「帰りもピックアップしてあげるから」・・・話がとんとん拍子に進み、コワい。

 そう言えば、明日が誕生日で娘達を招いていくれている子、クラスに参加させてくれるように担任の先生に交渉してくれた子の母親が見当たらない。どうしたのかたずねて見ると「体調が悪いみたいよ」!?じゃあ、明日は子供達を遊びに行かせるどころじゃないじゃないか、と心配していると、「大丈夫よ、food poisoning (食中毒)だから」。「なーんだ、じゃあ、明日は大丈夫だね」と反応できるKanao達は、既に立派なマレーシア人に戻っている。この国では、深刻ではないレベルの食中毒は、まま、あるのだ。

 スポーツデーのプログラムはどんどん進んでいく。自分の娘達が参加しているわけではないので、それほど興味は持てないが、鳥を撮るチャンスがあるかもしれないと持ってきた超望遠レンズで見知った子達の写真を撮る。後でプレゼントしてあげよう。

 ついでに、ちょっとトラックを抜け出して、構内の木立に入り込む。コウライウグイス、バカドリ(カバイロハッカ)、クロバカドリ(オオハッカ)とペナン常連組。時々大量発生するミドリカラスモドキもみかけた。そして、珍しいところでアカハラゴシキドリ。キツツキの仲間だ。ペナンに住んでいたときにはチャンスにめぐまれず、あまり鮮明な写真が撮れなかったのだが、なんと巣穴を発見。大きな芋虫を咥えて巣に運ぶ様子を観察することができた。ラッキー!

 さて、このスポーツデー、日本の小学校の運動会と随分違うところがある。まず、事前の練習というのは無い。従って、一糸乱れず列になって行進・・・なんてのは期待できない。それから、チームの分け方もイギリス流だ。ハリーポッターを見た人は分かるだろうが、クラスとチームは一致していない。同じクラスの中に赤、青、黄、緑の子達が居て、スポーツデーはこの色のチームで競い合う。ちなみに、この学校では同じ家族から来ている子は同じ色になる。我が家は黄チームだ。いや、「だった」。子供達は、チームカラーのTシャツを着ているので、チームを見間違えることは無い。

 スポーツデーの開始以来、一人の女の先生がマイクを握ってずっと指示を出したり、解説したりしている。事前練習が無いのでこうなるわけだ。野球中継と行動指示が入り混じったみたい。始まるなり「校長先生、一言喋りたい?喋りたいわよね?じゃ、どうぞ・・・」みたいな調子。校長先生も「今日勝つのは青かなー?もしかして緑?・・・」って感じ。そのたびに生徒達は歓声を上げるが、ブーイングは全く無い。「青かなー」と言った時でも、赤も黄も緑も「イェー!」と叫んでいる。

 生徒達がお喋りしてうるさい時でも「静かにしなさい!」なんて叫んだりは、絶対に、しない。黙って「ピッ!ピピピッ!ピッ!」と笛を吹く。生徒達は条件反射的に「Oh-Yeah!」と叫び、静かになる。講堂での学芸会の時は"Clap once!(手拍子一回)"、パン!"Clap twice!"、パン!パン!、だった。これで生徒達は静かになる。これが、この学校の雰囲気。なんか、懐かしくて、涙が出そうになった。

 スケジュールが押しているので競技が二つほどキャンセルになったらしい。いい加減と言えばいい加減だが・・・練習もしていないので、生徒の側から文句が出るはずもない。最後のリレーが終わり、優勝の発表。黄チームだった。我が家は参加したわけではないが、妙に嬉しい。


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